『道徳自警団がニッポンを滅ぼす』 イースト・プレス 2017年 文春砲、不倫狩り、自主規制……なぜ、彼らは「バッシング」に奔(はし)るのか。なぜ「不倫」報道ばかりに熱狂するのか?なぜアイドルに「恋愛禁止」を求めるのか?なぜ「巨悪」より「不謹慎」を憎むのか?そして、「ネット右翼」「意識高い系」との相関性は?成長なき「中世化」社会の「不寛容」なネット住民この「やっかいな人々」と、どう対峙するか?
◎〈彼ら〉は何を取り締まっているのか◎なぜベッキーだけがここまで叩かれたのか◎「若気のいたり」と「犯罪」のあいだには距離がある◎舛添要一前都知事は本当に「悪人」だったのか◎「よくできた話」だらけのウェブニュース◎「教育勅語」は日本人の道徳観を高めたか
■ネット社会が生んだ「息苦しさ」の正体
ネット社会が生み出した現代のクレーマーである「道徳自警団」。法律ではなく、道徳的であるか否かでものごとを裁き、テレビ局はもとよりスポンサー企業、雑誌社、ニュースサイトの編集部、市役所、町村役場、著名人、政治家、はては無名の個人にまで電凸、メール、FAX攻撃が容赦なく浴びせる。現在ではそれに恐れをなした有名人が発言を自粛。これこそ現在の日本の「息苦しさ」の正体そのものではないか。本書では具体例をもとに、このやっかいな現代のクレーマーとどう対峙するかの道筋を提示する。
【目次】
プロローグ 成長なきデフレ時代の申し子「道徳自警団」とは何か 近世オランダに生まれた「自警団」/「道徳自警団」の本書における定義/「道徳自警団」は何と戦っているのか/「道徳自警団」にとって「不道徳」「不謹慎」とは何か/「道徳自警団」への自主規制で息苦しくなる日本社会/「道徳自警団」への自主規制で衰退する日本経済/「道徳自警団」の論理的支柱とは
第一章 なぜネット上の「魔女狩り」が止まらないのか 緑茶が注がれたワイングラス/私が大手ブログの更新をやめた理由/「不寛容社会論」のウソ/オタクへの偏見がなくなった日本社会/「社会に余裕がなくなってきている」のウソ/中世の「魔女狩り」との共通点/「道徳自警団」は「成長なき社会」の象徴である
第二章 なぜ「不倫」報道ばかりに熱狂するのか 無名の議員が不倫報道で「人間のクズ」に/不倫報道後でも当選した山尾志桜里議員/山尾志桜里議員は、ほかの不倫議員と何が違ったのか/幸福実現党に投票した若者のおバカすぎる動機/おバカに迎合する「芸人コメンテーター」/中世並みの教養レベルに陥った日本の若者/なぜベッキーだけがここまで叩かれたのか/それが番組を放映中止にするほどの問題なのか/犯罪より「悪」の証明がしやすい「不道徳」
第三章 なぜアイドルに「恋愛禁止」を求めるのか アイドルに「社会の縮図」を求める人々/世界的に注目されたAKB48峯岸みなみの坊主謝罪/坊主謝罪の問題点(1)―「坊主=反省」という誤解/坊主謝罪の問題点(2)―「恋愛禁止」という人権蹂躙/坊主謝罪の問題点(3)――日本女性に残る封建的意識/「田母神ガールズ」への失望/男性師匠の世界観をトレースする女性論客/過度な女性擁護は「逆差別」にすぎない
第四章 なぜ「巨悪」より「不謹慎」を憎むのか 「道徳自警団」が出現するきっかけとなった事件/少年時代の「微罪」を理由に職を奪っていいのか/「若気のいたり」と「犯罪」のあいだには距離がある/子どもを「小さな大人」扱いした中世ヨーロッパ/サルの赤ちゃん「シャーロット」をめぐる論争/「道徳自警団」も「お墨つき」には勝てなかった/舛添要一前都知事は本当に「悪人」だったのか/「悪人」を退場させたものの……
第五章 なぜ「高い道徳性」が求められるのか 「よくできた話」だらけのウェブニュース/「日本人はマナーがいい」のウソ/日本人が「道徳小話」を好む理由/プロに任せたほうがいいこともある/それって本当に道徳的に正しいですか/就職の志望動機に社会貢献を挙げる学生たち/経済成長こそが社会貢献と看破した松下幸之助/「教育勅語」は日本人の道徳観を高めたか
エピローグ 〈彼ら〉を消滅させる「たったひとつの方法」 「いらだち」が蔓延するのは経済が悪いからだ/無意味な「現状肯定」なんてつぶしてしまえ/「カネより評価」「貧乏でも幸せ」なんてクソ食らえ/「カネがあれば幸せ」という前提に立ち返れ/「平成という中世」にNOを突きつけろ
コラム
(1)自主規制で史実から乖離していった歴史シミュレーションゲーム「提督の決断」(2)アメリカ海軍事故への「忖度」でテレビ放映が中止された映画『バトルシップ』(3)「道徳自警団」がタトゥーや茶髪を異常なまでに嫌う理由(4)「ネット右翼」「意識高い系」と「道徳自警団」に相関性はあるのか |